【2025年最新】空家対策特別措置法とは?特定空家指定のデメリットと活用方法を解説

日本の深刻な社会問題の一つである「空き家問題」。都市部から地方まで、全国各地で増え続ける空き家は、景観の悪化、治安の低下、そして何よりも防災上のリスクをはらんでいます。

この問題に国が本格的に乗り出すきっかけとなったのが、**「空家等対策の推進に関する特別措置法」**です。2015年に施行され、その後も改正を重ねながら、空き家対策の主軸となっています。

しかし、この法律の内容を正しく理解している空き家所有者は、まだ多くはありません。特に、自宅や実家が空き家になった際、「特定空家」に指定されると、思いがけないデメリットを被る可能性があります。

この記事では、空き家所有者、そして空き家を活用したいと考えている方々に向けて、2025年時点での最新の法律の概要から、特定空家指定の具体的なデメリット、そして空き家を負の遺産にしないための活用方法まで徹底解説します。


1.なぜ今、空き家対策が重要なのか?空家等対策特別措置法の概要

空家等対策特別措置法は、正式名称を「空家等対策の推進に関する特別措置法」といいます。この法律は、増加する空き家が引き起こす様々な問題に対処するため、国や地方自治体が空き家対策を総合的に推進するための法的根拠を定めたものです。

法律の目的と主な内容

この法律の最も重要な目的は、**「空き家を放置することによる危険を防止し、地域住民の生活環境を守ること」**です。そして、その目的を達成するために、以下の3つの柱を定めています。

  1. 特定空家の認定と措置: 倒壊の危険がある、衛生上有害であるなど、特に問題のある空き家を「特定空家」に指定し、所有者に行政指導や命令を行う。
  2. 空き家情報の活用: 空き家バンク制度や、空き家の利活用に関する情報の提供を促進する。
  3. 財政的支援: 空き家の解体やリフォーム、活用を促すための補助金や税制優遇措置を設ける。

特に、私たち空き家所有者が最も注意しなければならないのが、最初の「特定空家の認定と措置」です。

住宅:空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報 – 国土交通省

2.特定空家とは?放置するリスクと指定のプロセス

「特定空家」とは、空家等対策特別措置法第2条第2項で定められた、以下のいずれかに該当する空き家を指します。

  • 倒壊等の著しい危険がある状態
  • 著しく衛生上有害となるおそれがある状態
  • 著しく景観を損なっている状態
  • その他、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

特定空家指定のプロセス

特定空家は、地方自治体(市町村)が、周辺住民からの通報や巡回パトロールによって発見し、認定します。

  1. 現地調査: 自治体の担当者が空き家の状態を確認します。
  2. 助言・指導: 所有者に対して、適切な管理を促すための助言や指導を行います。
  3. 勧告: 指導に従わない場合、自治体は「勧告」を行います。この勧告が、後述する固定資産税の優遇措置が解除される重要な分岐点となります。
  4. 命令: 勧告にも従わない場合、自治体は「命令」を出します。命令には罰則(50万円以下の過料)が付随します。
  5. 代執行: 命令にも従わない場合、自治体が所有者に代わって空き家の解体や撤去を行い、その費用を所有者に請求します。

このプロセスを見てわかる通り、特定空家への指定は段階的に進められますが、放置すればするほど、所有者が負う負担は増大していくのです。

3.特定空家指定の決定的なデメリット:固定資産税6倍増の恐怖

空家等対策特別措置法における特定空家指定の最大のデメリットは、**「固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなる」**ことです。

住宅用地特例とは?

通常、住宅が建っている土地は、固定資産税と都市計画税が大幅に軽減される特例が適用されています。

  • 固定資産税: 200m²までの部分(小規模住宅用地)は課税標準が6分の1に、200m²を超える部分は3分の1に軽減されます。
  • 都市計画税: 200m²までの部分は課税標準が3分の1に、200m²を超える部分は3分の2に軽減されます。

これにより、家屋が建っているだけで、更地よりも税金が大幅に安くなるという現象が起きていました。これが、たとえ住んでいないボロボロの家でも、「解体すると税金が上がるから」という理由で放置される大きな原因となっていました。

特定空家指定による優遇措置の解除

しかし、空家等対策特別措置法により、「特定空家に指定され、自治体から勧告を受けると」、この住宅用地特例が解除されてしまいます。

つまり、家を解体しなくても、固定資産税の軽減措置が適用されなくなり、税金が最大で6倍に跳ね上がるのです。

これは、空き家を放置し続けることに対する、国からの明確なペナルティといえます。

その他のデメリット

  • 過料の支払い: 自治体からの命令に従わない場合、50万円以下の過料が科せられます。
  • 代執行費用: 自治体が代執行で解体した場合、その費用(数十万円から数百万円)はすべて所有者が負担することになります。
  • 近隣トラブル: 倒壊や景観悪化、害獣・害虫発生などで近隣住民とのトラブルに発展する可能性が高まります。
  • 資産価値の低下: 放置された空き家は資産価値がゼロに等しくなり、売却も困難になります。

4.空き家を負の遺産にしない!賢い3つの活用方法

空き家を放置し、特定空家として指定されるリスクを回避するためには、早めの対策が必要です。空き家を単なる負の遺産ではなく、資産として有効活用するための3つの方法を紹介します。

① 解体して売却する

特定空家に指定され、固定資産税が上がる前に、思い切って解体し、更地として売却する方法です。

メリット:

  • 買い手が見つかりやすい。
  • 税金の負担が明確になる。
  • 近隣トラブルの根本的な解決になる。
  • 解体費用の一部に補助金が利用できる場合がある。

デメリット:

  • 解体費用が高額になることがある。
  • 固定資産税が上がってしまう。

② リフォーム・リノベーションして賃貸・売却する

まだ建物の状態が良好な場合は、リフォームやリノベーションを施し、収益物件として活用する方法です。

メリット:

  • 家賃収入を得ることができる。
  • 売却益が見込める。
  • 建物を残すことで、資産価値が維持できる。

デメリット:

  • リフォーム費用が高額になる。
  • 賃貸物件としての需要がない地域では借り手が見つかりにくい。

③ 専門家を頼って空き家活用を検討する

個人で判断するのが難しい場合は、専門家や専門機関に相談するのが最も賢明な方法です。

  • 不動産会社: 空き家を売却・賃貸に出したい場合に相談。空き家バンクへの登録もサポートしてくれます。
  • NPO法人・まちづくり団体: 地域によっては、空き家の利活用を専門にしている団体があります。地域のニーズに合わせた活用法を提案してくれます。
  • 行政(空き家対策窓口): 市町村の空き家対策窓口では、相談に応じてくれます。補助金制度や空き家バンクの情報も提供しています。
  • 解体業者: 解体ありきではなく、まずは「解体か、それとも活用か」といった相談に乗ってくれる信頼できる業者を見つけることが重要です。

5.2025年最新情報:空き家対策の新たな動き

空き家問題は、社会情勢の変化に合わせて常に進化しています。2025年現在、注目すべき新たな動きをいくつか紹介します。

  • 所有者不明土地対策の強化: 所有者が分からず、特定空家への対応が困難なケースが増加しています。法務局に所有者の氏名等を届け出る義務化や、登記制度の見直しが進められています。
  • 「特定空家」の判断基準の具体化: 自治体ごとにばらつきがあった「特定空家」の判断基準が、国によってより具体的に示される動きがあります。これにより、所有者はより明確な基準で自身の空き家が危険な状態にあるかどうかを把握できるようになります。
  • 解体費用補助金の拡大: 各自治体では、空き家の解体費用を補助する制度が継続・拡大されています。2025年現在、補助率は解体費用の2分の1から3分の2程度、上限額は50万円から100万円程度が一般的です。

これらの動きは、空き家所有者に対して、より一層の迅速な対応を促すものといえます。

まとめ:空き家問題は「他人事」ではない、早めの対策を

空き家対策特別措置法は、空き家を放置することによって生じる様々なリスクから、所有者自身と地域社会を守るための法律です。

  • 特定空家指定: 放置すれば、固定資産税の優遇措置が解除され、税金が最大6倍に跳ね上がる。
  • 放置のリスク: 罰則、代執行費用、近隣トラブル、資産価値の低下など、金銭的・精神的な負担が増大する。
  • 賢い活用法: 解体して売却、リフォームして賃貸、専門家への相談など、早めに行動することが重要。

「そのうち何とかしよう…」と先延ばしにしていると、状況は悪化する一方です。空き家は単なる建物ではなく、大切な資産です。まずは、ご自身の空き家が特定空家に該当しないかを確認し、信頼できる専門家に相談することから始めてみませんか?

私たちは、空き家の解体から活用まで、最適な方法をご提案するお手伝いをしています。お気軽にご相談ください。